ノリコには好きな人がいた。スミス・トーレン。初恋の人だったと思う。
今はもういない。
宇宙怪獣との戦いで死んでしまった。
思い出すたび切なくなる。もう少し自分がしっかりしていれば・・・
宇宙怪獣との戦いは終わる事を知らないかのようにいつまでも続いていた。
突然、ノリコはカズミやユングとともにオオタに呼び出された。そこで聞かされたのは意外な辞令だった。
「ロンド・ベル隊に配属?」
「そうだ。タシロ提督からの正式な辞令だ。」
ノリコはその部隊を知っている。有名なスーパーロボットやリアルロボットが集結している部隊だ。
その部隊への配属。願ったりであった。
「・・・?タカヤ、何をにやけている」
「な、なんでもありません!コーチ」
想像だけで表情が緩んでいたようだった。
「一時間後に合流する。それまで待機しておくように!」
『はい!』
カスミと声が重なる。
コーチの部屋から退室し、女子の待機室に戻る途中ノリコは興奮を隠しきれず、カズミに話しかけた。
「お姉様、私楽しみです!」
「そういえば、あなたアニメヲタクだったわね」
「そうなんですよ〜。だから楽しみでしかたがないんです!」
ロンド・ベル隊は、アニメヲタクにとってまさに天国といっても過言ではなかろう。新旧のロボットアニメのマシンが揃いぶみしているからだ。
その天国に今ノリコは足を踏み入れようとしていた。
一時間後、エクセリヲンはマクロスと合流を果たした。ブリーフィングがマクロス艦内にて行われる事となった。
「艦内に町があるなんて信じられない!!」
「それはそうよ、ノリコ。マクロスはエクセリヲンと違って星外移民を目的とした船ですからね」
「・・・逃げるための船なんですか?」
「最初の目的はそうだったはずよ。今は違うようだけど」
そう、確かに今は逃亡を目的とはしていない。
地球をねらう侵略者と戦うために各地で戦闘を繰り返している。
しかし、その戦いがいつ終わるのか誰も知らない。
「さあ、いきましょう」
「そうね」
足早に歩を進めるカズミとユングだった。
「ちょっと待ってください!!」
目の前を行く2人の姿が廊下の角で消える。
それをあわてて追って行くノリコだった。
「何で俺たちが哨戒任務なんだ?」
哨戒任務に向う途中、忍が文句を言った。
「知らないよ。」
正確には哨戒任務は当番制だ。雅人もそれは知っているはずである。
そして、今日の哨戒任務の当番は獣戦機隊なのである。
「馬鹿いってんじゃないわよ、忍。任務なんだからね」
憎まれ口を叩く沙羅である。
正直、沙羅もこの哨戒任務には出たくない。
何せ今日は新しいチームが合流するらしい。それに立ち会えないのが少々悔しいのだ。
「沙羅の言うとおりだな。駄々をこねるだけ無駄だ」
ふう、と1息ため息をつく。
こう見えても結構な面倒くさがりな亮である。任務なので仕方なしと言った所だろうか?
そして、艦長であるブライトの石頭っぷりは良く知っているつもりだ。
「ブライトさんも人使い荒いんだよ!・・・まあ、イゴール長官よかマシだけどよ」
ブライトより今はここにはいないイゴールのほうがまだ苦手な忍だった。
実際、たぶんブライトのほうが頭は柔らかいだろう。
そうでなければ民間人をここまで同行させない。
ロンド・ベル隊には民間人が多い。
もちろん、忍たちのような軍属もいる。しかし、マジンガーチームやゲッターチーム、コンバトラーチーム、ボルテスチーム。こう挙げてみるだけで民間人が多いことがわかる。
そして、ガンダムパイロットにも民間人は意外に多い。例を挙げるとするなら、ジュドーやウッソだろう。
「さっさと行こうよ。またブライトさんに怒られるよ!」
珍しく、雅人が催促をする。
雅人もブライトに怒られるのは勘弁してもらいたいのだろう。
「いけねっ!行くぜ、みんな!!」
あわてて走り出す忍であった。
カズミたちがいない。
確かに後をつけて行ったはずなのにどこにもいない。
どこかで道を間違えたのか、それとも今まで来た道のりにブリーフィングルームがあったのか。
始めてくる艦で迷ってしまうとは不覚だった。
どんどん奥の方へ進んでいく。一向にそれらしき場所は見つからない。
泣きそうになってくる。
泣いちゃだめだ、と思いとどまる。泣いても仕方が無い。泣けばどうにかなるのならもうとっくに泣いている。
「何で俺たちが哨戒任務なんだ?」
「知らないよ。」
「馬鹿いってんじゃないわよ、忍。任務なんだからね」
「沙羅の言うとおりだな。駄々をこねるだけ無駄だ」
「ブライトさんも人使い荒いんだよ!・・・まあ、イゴール長官よかマシだけどよ」
遠くの方で声が聞こえる。
間違いなく人がいる。その人たちに聞けば、最悪ここがどこなのかはわかるだろう。
急いでその人たちに会おうと思い走り出した。
トップスピードに乗ったとたん、横の通路から人が出てきた。タイミング的にも避け切れない。
「でえっ!?」
相手側も気づいたらしいが止まれないようだ。
「きゃあ!」
「うわっ!」
見事にぶつかってしまった。
「痛たた・・・大丈夫か?」
ぶつかった相手が手を差し伸べてくれる。
「スミス・・・?」
懐かしい声。
今はもう聞けないはずのあの声だった。
「お、おい?」
気付いたときにはその声の持ち主に抱きついていた。
「なにやってんのさ、忍!!」
背後から声が聞こえる。
『そっか、忍っていうんだ・・・・』
ノリコはその人の名前を心の中で反芻した。
「ちょっと待て、沙羅!俺が悪いんじゃない!!」
何かおかしい。ノリコはそう思った。
そしてようやく気付く。自分の置かれている状況に。
血の気が一気に引いた。
「ご、ごめんなさい!!!!!」
急いで手を離し、勢いよく謝った。
「えっ!?」
後から来た女性が忍を殴ろうとする直前だった。寸止めは効かず、そのままコブシは忍の頭に直撃したのだが。
「だから言っただろ?俺が悪いんじゃないって」
忍は頭に大きなこぶを作っていた。
「ごめんよ忍。勘違いしたみたいで」
殴った沙羅は平謝りをしていた。
勘違いとはいえ、忍が他の女に抱きつかれるなんて見たくは無かったから少しカッとなってしまったようだ。
「それでキミは?何でこんなところにいるんだい?」
雅人も亮もここにとどまっている。
「あの!道に迷って・・・」
どうしても、シドロモドロしてしまう。
「一般人がこんな格納庫付近まで入ってきちゃだめだよ」
諭すように雅人が言った。
まだ彼らはノリコの素性を知らない。知ればどれほど驚くことか。
「ブリーフィングルームってどこにあるんですか?私そこに行かないと」
亮の表情が少し変わる。
「ブリーフィングルーム?もっと手前だよ」
沙羅が答える。
天然でここまで来るなんてマサキのようだ。
「あんた、トップ部隊の人か?」
亮が代わって質問する。
「そうです!」
ノリコも素直に答える。
「私、トップ部隊のタカヤノリコといいます!皆さんは?」
礼儀正しく。
今はなき父親に言われていたことだった。
「俺ら?俺らは獣戦機隊だよ」
そっけなく忍が答える。
「皆さんどうしてこんな所にいるんですか?」
ノリコの素朴な疑問だった。確か、メンバーはブリーフィングルームに全員集合だったはずなのだ。
「・・・あーーーー!!!まずいよみんな!哨戒任務!!」
雅人がすっかり忘れていたことを思い出す。
早く行かないと、アストナージに怒られるのは間違いないだろう。
「でも、どうするんだい?この子」
放って置くわけにもいかない。
できることならブリーフィングルームまで連れて行くべきだ。しかし、今の状況でそれができるか、と言われれば微妙なところだった。
「忍、お前が連れて行ってやれ」
突然の提案だった。
「そうか、イーグルファイターだ!!」
雅人も亮の意図に気付いたようだ。
忍が操縦する獣戦機、イーグルファイター。4機ある獣戦機の内、最も足が速く少々の遅れくらいすぐに追いつける。
「あんたのことさ、すぐに追いつくね」
沙羅が忍の肩をポンと叩く。
沙羅もこの意見に賛成だと言うことらしい。
宇宙空間だとは言え、イーグルファイターの足の速さは地上にいた時とさして変わらない。いや、むしろ早くなっている。それなら、イーグルに後を追わせる事ができるならその方がいいだろう。ランドクーガーが後を追ってもなかなか追いつけない。
「わかったよ!!さっさと行ってこい!!!」
その感じから嫌そうだ。しかし、多勢に負性。かないっこない。
そして、自分に押し付けられている理由もわかっているからなおさらだ。
「頼んだよ、忍」
その場に忍とノリコを残し、残りの3人は急ぎ足で格納庫に向った。
気まずい空気が流れる。
ノリコは抱きついてしまった手前、忍の顔を直視できない。
忍も照れ臭くて、ノリコの顔を見ていなかった。
「・・・行くぞ」
照れ臭さを振り払って、ノリコを呼ぶ。
「はい!」
その後を元気よく付いて行くノリコだった。
え〜と・・・最初に言っておかなきゃならないのは、
声優ネタですみません・・・
って事です。
わからない方を完全に無視した作品になってますねぇ。
前置きとしてあるのは、スミス・トーレンはノリコの初恋の人であると同時に、声優さんが忍と同一人物であると言うことです。
トップをねらえをはじめて見た瞬間、このネタを思いつきました。
なんかいいカップルになりそうなんですよね、この2人。
あ、そうそう。
まだまだ続きますよ、この話。