2年前のあの事件は「ウンターズーフン事件」と呼ばれ、多くの行方不明者と、謎を残したままになった。
行方不明者の捜索はすでに打ち切られ、その捜索で発見された人は全体の1割にも満たなかった。まるで神隠しにあったかのように世界各国で合計40万人もの人々が完全に行方をくらました。
しかし、この事件も人々の記憶から忘れ去られようとしていた。
ただ、忘れられない人々もいる。家族や知人、恋人が行方不明になった人々だ。心に深い傷を残した人もいる。
そして今、新たな惨劇が生まれようとしていた。
空が一瞬暗くなる。
人々が見上げる。
そこには、いつか見た飛行物体がいた。
逃げ惑い、混乱する人々。
攻撃はしないだろうと高をくくる者もいた。
しかし、予想は裏切られた。
攻撃を仕掛けてきたのだ。
町は、混沌と化した。
立ち込める血と硝煙のにおい。我先にと逃げ出すものもいた。
崩れ行く町。所々に見える死体の数々。
あっけなかった。
1時間もたたないうちに1つの町が廃墟と化した。
このニュースはすぐさま世界を駆け抜けることとなる。
『・・・西オーストラリア州の州都パースが日本時間で昨夜未明、何者かに襲撃された模様です。都市は廃墟と化しており、住民も、遺体は一切発見されず全員失踪しています。誰が、何故、襲撃したのかは一切不明。この件に関しては、テロではないのか、という声がほとんどを占めていますが、一部情報筋では、2年前の「ウンターズーフン事件」に関係があるのではないかとの声も見られます。では、現地の中谷さん、状況を・・・』
テレビ、ラジオ、すべてのメディアにおいて世界各国に流れたこのニュースは大きな反響を呼んだ。
そして、発表されたのが、主要各国の「非攻撃」宣言だった。何処のテロ組織からも犯行正文が発表されず、主要各国から発表されたこの宣言がさらに、混乱を招く事になったのは言うまでもない。
「何処も攻撃していないならいったい誰が?」
さまざまな憶測が飛び交った。
そうしている内に次のニュースが飛び込んできた。
また、別の都市が襲われたのだ。場所はインド、アーメダーバード。
パースでおきた事と同様に、都市は廃墟と化しており、住民も、遺体もなく全員失踪していた。
前の事件とまったく同じ手口であり、同一の集団という意見ですべての国は一致した。
そして、臨時の国連総会が行われることとなる。
総会は一向に進まなかった。誰がやったのかわからないのに、話合いが進むはずがなかった。
総会の最終日、突然、1人の乱入者が現れる。
そいつは使者と名乗った。
使者は話すことだけ話して姿を消した。
その内容に参加者すべてが愕然とした。
「全人類に対する、宣戦布告だ。」
誰かがそう言った。
参加者すべてがそれに賛同した。
総会は延長された。その相手にどう対抗するのかを決めるために。
その総会が行われている間に、人類は次の襲撃を受けた。
場所は日本、横浜。
今までの事件で警戒していた日本政府は一つの命令を出していた。
それは、出撃命令。
自衛隊ではなく、到底出撃命令など出ない様な所に出たものだった。
この命令が、世界の運命を大きく変えることになるとは誰も思いはしなかった。
謎の集団に襲撃されている、横浜市。
逃げ惑う人々の中にただ1人、立ち止まっている男がいた。
背は180センチほど。体格は良くもなく悪くもなく。顔立ちからして17、8歳だろうか。何か心に決めているような深刻そうな表情をしている。
決心したように走り出す。人波に逆らい、かき分けながら徐々に進んでゆく。
目指しているのは、襲撃の中心地。
町の中を駆け抜けていく。中心に近付くに連れ人は少なくなる。
襲撃の中心部はすでに廃墟と化していた。
「こりゃあ・・・」
廃墟と化した町の中心部で立ちすくむ。
まさか、ここまで・・・
男はそう思った。
男も今までに起こっていたニュースは聞いていた。廃墟と化した映像も見た。しかし、ここまで完全な廃墟となると思っていなかった。
故郷が踏みにじられる。
それだけは許せなかった。いや、許すことが出来なかった。
「くそったれ!!」
その声に何かが気づいた。
どこから現れたのか、ライフルのような物を持っている異形の者があたりを囲んだ。10人くらいだろうか、その程度の数で男を取り囲んでいる。
警戒のためだろう。これまでの襲撃でその様なものがまったく無かったのにもかかわらず。
突然、異形の者がライフルのような物を構える。
男を異物と判断したのだろうか。
光が走る。
地面の一部が抉れた。
「あはははは・・・」
不味い所に来た。
一瞬、頭をよぎった。
多分、あれは警告だ。
男はすぐにそう思いついた。
そうして、叩きのめすしかない。とも考えたのだった。
もう、一閃。光が走る。
男の足元のすぐ横が抉られた。
しかし、もうそこには男はいなかった。
瞬間、異形の者の1体が倒れた。すぐ横にあの男が立っている。
「なーめちゃ、いけないよ」
のんびりした口調で、あっという間に5体、異形の者を昏倒させた。
残り、4体。
「弱いな、こいつら」
男の正直な感想だった。
どうして、こんな奴らが街を廃墟まで追い込んだのか解らなかった。
その時、大地が揺れた。
「な、何だあれ・・・」
巨大な建造物が突然動き出す。見たことも無いフォルムを持っていた。かろうじてわかる事といえば、それが人工物である事と人の形をしている事ぐらいだった。
そうして感じた事は、その物が持つ禍々しさ。男はその姿に嫌悪感を感じた。
直感する。これが、街を廃墟まで追い込んだ物だと。
それが動き出したとなれば・・・
男は顔を青くした。
考えたくは無かった。この街が全て壊れてしまう事など。
どうにかしたい、だが、何も出来ない。
「くそぉ!生身じゃ何も出来ないって言うのかよ!」
怒りをあらわにするが、どうにも出来ない。やはり生身の人間には太刀打ちできないのだろうか。
「ちょっと待てよ・・・」
何か思いついたのだろうか、ニヤリと薄く微笑んだ。
「あれが造った物だとしたら・・・」
すぐに行動に移したようだ。すでに、そこには男はいなかった。
この男のどこにこのような身体能力があるのだろうか。不思議に思えてならない。一般の人間が持てる事が無いような能力だ。
疾風のように駆け抜けていく。
涼しい顔をしたまま崩れかけた街を縫い巨人の下を目指す。
足元までたどり着くとその外壁をよじ登りだした。
「案外、登りやすいな」
ひょいひょいと外壁を登っていく。
そうして、あまり時間も経たないうちに頭の上までよじ登ってしまった。
「うわっ!高けーな」
頭の上から地上を見下ろす。
突然、甲高い音が聞こえる。まるで、ジェット機が飛んでいるような音だ。
男は空を見上げる。
2機の戦闘機が頭の上で弧を描いていた。
「何だ?普通の戦闘機じゃないな・・・」
黒と白のシルエットが空に浮いていた。
『君!!何でそんなところにいるの!?』
白の戦闘機から声が聞こえた。声から推測すると男らしい。
『早く降りて!!』
「いったい何だって言うんだ?」
そう言いながらも、白い戦闘機の命令に従って巨人の頭から地上に降りる。
『誘導するからそこまで来てくれないかな?』
従うしかないと観念したのか、
「わかったよ!!」
可能な限りの大声で白い戦闘機に返事を返した。
『O.K。じゃあついて来て』
「あ、あれで聞こえたのか?」
もちろん聞こえてはいない。白い戦闘機のパイロットの判断だ。
追いかけて行く事10数分。元は何かの競技場だったのだろうか、広い空き地にたどり着いた。
2機の戦闘機もその空き地に着陸した。
白い戦闘機からパイロットが降りてくる。色の白い、青い髪の少年。男は一瞬見とれた。
「初めまして。少し聞きたい事があるんだけど?」
話しかけられ男は我に返る。
「あ、ああ。何だ?」
「君は何者だい?どうしてあんな所にいたんだ?」
「あいつをぶっ壊せたらって、思ったんだ。あのまま放って置くとなんか嫌な予感がして・・・壊せたらいう事ないだろ?街、これ以上壊されるのも癪だしな。この手で何かしたかったんだよ」
男は正直に答えていた。ただ、最初の質問には答えてなかったが。
「それは、わかるよ・・・君の名前は?」
「アキラ。長谷川明」
「アキラ・・・」
少年は少し悩んでいるようだ。
「アキラ、その黒い方に乗って!!」
もう1機へ乗るように少年が指図した。
「え゛っっ!!」
戸惑いの色が隠せない。
「早く!!」
「ちょっと待てよ!オレこんなの操縦できないぜ!」
「大丈夫。基本的に自動操縦だから」
実に大まかに説明している。
「お前!名前は!?」
聞いていない事に気づいたのか、あわてて尋ねた。
「シュッツェン・ヒルフェ。みんなはシュッツって呼ぶ」
白い方に乗り込もうとする。
「ちょっと待て、シュッツ!こいつの名前は?」
「フェアタイディゲン」
「フェア?」
その言葉に疑問を抱きつつ、黒い戦闘機に乗り込んだ。
0章での約束を全て果たしていません。ごめんなさい。
主人公はちゃんと出せたんですが、ほかのキャラクター紹介なんて1つも出来ていないです。博士なんてまったく出てないし・・・
主人公はアキラです。わかると思うけど、勘違いされたら痛いんで、ここで明記しときます。
何の襲撃か?なんてのがさっぱりわからないまま1章が終わってしまいました。
2章以降で明らかになります。
2章で博士が出せるのかもかなり微妙なんですか・・・
とりあえず、早い目のアップを目指します。