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8章  Scharfschutze -狙撃-

 それは突然起こった。
 逃げ惑う人々、燃え上がる火の粉。
 災害の類いではない。人為的なものだった。
 今の時代、人為的にこういうテロを起こす存在はただの一つしかない。
 UM。
 世界各地が動向を見守り、そして世界各地が最も恐れているものだった。
 しかし、その場にUMの姿はなかった。

「また、妙な位置に現れよったのぅ・・・」
 研究員の報告を聞きながら浦辺は呟いた。
 大阪が襲撃(?)されてから15分が経っていた。
 銃弾の着弾位置からUMの位置を割り出すのにたいして時間はかからなかった。
 割り出したその位置は何もない場所だ。
 何故何もないのか?
 それは、そこが高度3000メートルの空だからだ。
「あの二人をここへ。」
 手近に居た研究員を呼び止め、指示を出す。
 まもなく、呼び出された二人がやって来た。
「UMですか?」
 着いたすぐに浦辺に訪ねる。
「そうなんじゃが、ちょっとわけのわからん所におってのう。」
 目の前にある巨大なモニターに生映像が映し出される。
 空にポッカリと浮かぶUMの姿が悠然と映っていた。
「空・・・?」
 シュッツはいつもと違う出現パターンを疑問に思っているようだった。
「でも、空ならナーエでどうにかできるだろ?」
 フリューゲル。そう呼ばれる飛行システムがナーエには備え付けられていた。高度3000メートルくらいなら、完全に飛行範囲内だ。
「そうなんだけどね。」
 言葉を濁す。
 何か気掛かりでもあるのだろうか?
「わざわざ空から狙ってくるのに疑問感じてるんだろ、お前は。」
 そういって、シュッツを小突く。心配しすぎだと言わんばかりだ。
「それもあるけど、何だか試されているような気がして・・・」
 これだけは直感だった。
 何に試されているのかは漠然としてはっきりしない。しかし、シュッツは確かに試されているような気配を感じ取っていた。
「お前の勘は当たるからな。気にしておいて損はないか。」
 気にすると言っても、気にしにくいことではあるのだが。
「出方はどうであろうともUMには間違いないからのう。」
「今回も回収ですか?」
 一応確認だけしておく。無論答えはわかっているつもりだ。
「そうなるな。」
 当然の如く答える。
「すぐにブッ壊せたらいいんだけどな。」
 頭をかきながら呟く。
 しかし、アキラもUMのサンプルが必要なことはわかっていた。
「すぐに出動じゃな。」
『了解』
 二人は声を合わせて返事をした。

 シュッツには心に決めていたことがあった。
 決して言葉には出さないし、行動にもうつそうとはしない。
 時が来るまで・・・
 そう思い続けて何年経ったのだろうか?
 その時は間近に迫っているとシュッツの直感が告げていた。
(まさか、ね・・・)
 そんな思いを噛み殺す。
 今は、目の前にあることを終わらすことが優先。
 そう、考え直した。

 大阪上空3000メートル。
 そこにUMは悠然と構えていた。
 先程の大阪の狙撃からたいした動きもなく、ただそこに静止していた。
 日本政府としては幸いとしか言いようがないだろう。一撃だけなら復興も比較的簡単に済む。ただでさえ、UMの標的になっているのだ。被害が少ないのにこしたことはない。
 フェアは既に合体を終えていた。
 狙撃をしてくるのなら接近戦には弱いだろうという考えのもとナーエで攻撃を仕掛けることにした。
「動かないんなら、こっちから行かないとな。」
 アキラは身構える。
 簡単にケリはつく。そう思っていた。
 その考えが甘いことに気付くのにそう時間はかからなかった。
Flamme Speerフランメ シュペーア!!」
 一撃必殺。
 時間をかけずに決めようと思っていたのだろう。
 しかし、その攻撃でUMが機能を停止させることはなかった。
「何?!」
 一瞬、何が起こったのか、さっぱりわからなかった。
 弾かれたのだ。
 UMに触れることなく弾かれた。
「くそぉ!」
 訳がわからず殴りにいくが、全ての攻撃は無駄だった。
 やはり、弾かれる。
「どうなってんだよ?」
「シールドみたいなものが展開されてるみたいだけど・・・」
 はっきりとはよくわからなかった。
「やれるだけやってやる!」
 なりふり構わず技を出していく。しかし、その全ては弾かれていった。無論、ナーエ最大の攻撃力を誇るDoppelt Schockドッペルト ショックですら弾かれてしまった。
「どうすりゃいいんだよ・・・」
 すっかり、困り果てていた。
「一つだけ、試してないのがあるよ?」
 シュッツが気付いた。
「あれは・・・」
 アキラも何の事なのかよくわかっていた。
「大勢でこられたときの全方向型の技だぜ?」
 この場面で使えそうには無いといいたいのだろうか?
「でも、使ってみないとわからないよ?」
 アキラは頭をかく。
「わかった。やるよ。」
 ナーエを少し後ろに下げる。
Serien Schussゼーリエン シュス!!」
 ナーエの全身から何本もの光の刃がほとばしる。
 先程までと違って爆炎が巻き起こる。
「やったか?」
 多少は効果が有る様ではあった。
「ダメだね。機能停止は確認できない。」
 煙りが晴れ、再びUMが姿を現した時、その異変に気付いた。
「おい、シュッツ!見てみろ」
 アキラが指したあたりに、確かに破損した痕がある。
「効いてる?」
「なら、何回でも撃ち続けてやる!」
 光の刃が無数に飛び交う。
 それでも決定打とはならない。少しずつ装甲を傷つけていくだけでたいしたダメージにはなっていなかった。
 たいしたダメージになる頃には、フェアがエネルギー切れに陥ってしまう。
 これでは埒があかない。
「・・・ちょっと待って。」
 エネルギーが残りわずかになり、打つ手が無くなりつつあるが、シュッツが何かに気付く。
「何だよ?」
「もう一回だけ、撃ってみて。」
「次撃ったら飛ぶので精一杯になるんだぞ?」
 (ゼーリエン シュス)の連発はフェアに大きな負担を掛けていた。
「その、次で弱点がわかるかもしれないんだ。」
「何?」
 これを聞いて何もしないアキラではない。
「そういうなら、やってやろうじゃないか!」
 最後の閃光がUMを貫く。
 しかし、何度やっても結果は変わらずUMは怯む様子もない。
「わかった!」
 それを見て、ようやく何かを掴んだようだ。
「アキラ、降下しよう!」
「へっ?」
 突然の提案に戸惑う。
 シュッツが何をやりたいのか、アキラには掴めなかった。
「地上から、フェルンで狙い撃つ。」
「それが弱点だっていうのか?」
 アキラとすれば信じられない。フェルンで攻撃するのが弱点だとは思えなかった。
「正確には超遠距離攻撃が弱点。」
「なんでだ?」
Serien Schussゼーリエン シュスで攻撃すれば、何故ほんのわずかだけどダメージが与えることができたのか?って話なんだよね。」
 つまり、シュッツが言いたいのはこういう事だ。
 遠距離から攻撃すると、攻撃を弾いているバリアの展開が遅れる。
 そこをつけば破壊することも可能である。
 つまり、フェルンで地上から狙撃すれば破壊可能であると踏んだのだ。
「なるほどね。よし、やろう!Trennenトレンネン!!」
 アインとツヴァイに分離する。
 ただしすぐには合体できない。地上に近付いてからフェルンに合体する。
Andern fernエンダーン フェルン!!」
 シュッツの声と共に合体シークエンスが開始される。
 ナーエに合体する時に比べ、少しぎこちないのは仕方が無いことだろう。
 絶対的な合体回数が違う。しかも、合体訓練を始めてまだ間もない。
 それでも軽い戦闘なら実用レベルまで達していた。
Immens Anprallイメンス アンプラル。」
 掛け声と共にフェルンの両腕が巨大な銃心へと変化していく。
Zielenツィーレン。」
 コクピットにスコープが現れる。
 上空3000メートルに居座るUMに狙いを定める。
 シュッツはこの一撃でUMを仕留めようとしていた。
 充分に狙いを定め、引き金となるキーワードを発する。
Feuernフォイアーン
 声と同時に銃心から巨大なエネルギーの塊が発射される。
 雲を突き破り、空を裂き、UMに迫り来る。
 鈍い音と共にUMはなす術もなく胴体に風穴を開けていた。
 全ての機能は停止し、地球の重力に引き付けられるように海へ落下していく。

 何も無い空間がある。
 そこに、玉座が現れる。
「彼等は合格だね。」
 玉座に座っている男が呟いた。
「僕らが真に倒すべきは彼等だね。」
『はっ!』
 左右に控えている二人が同時に答える。
「本格的に彼等の事を調べるよ。
 ヴィッセン、今彼等についてわかっていることは?」
 右に控えていた男が前に出る。
「あの機動兵器、フェアタイディゲンと呼ばれているようです。
 先程の実験よりわかった事ですが、2形態に変形するようです。
 パイロットについては今のところわかっておりません。」
 化学者風の男が報告を終える。
「そう、以降はさらに詳しく調べようか。
 マハト、次からはどうする?」
 左に控えていた、武人風の男に玉座の男は尋ねる。
「人工知能はもはや限界。
Soldatゾルダートを使います。」
「わかった。人選に関しては君に任せるよ。」
「お任せ下さい。」
 恭しく頭を下げる。
「地球人類は愚かにも僕たちレフォルムに牙を剥いて来た。その行為に後悔するときは近い。
 今後の君達の活躍に期待するよ。」
『はっ!』
「レフォルムに栄光を」
 化学者風の男が消える。
「レフォルムに栄華を」
 武人風の男も消えた。
 残ったのは玉座とそれに座った男だけ。
「あちらには、僕に似た人がいるみたいだね。」
 クックッと小さく笑った。
「さて、どうなるのか・・・楽しみだよ。」
 言葉に余韻を残し、玉座も男も姿を消した。


あとがき

 次の話から本格的にレフォルムが攻めてきます。
 今までが前哨戦だったわけです。

 実は、今までUMは1体ずつしか出てきてなかったんですよね。
 それが複数出てくるようになります。
 戦いが激化していくんです。

 ちなみに、この地点でアキラとシュッツが出会ってから半年くらいです。
 時間経過を書いておかないと忘れそうだ。(汗)

 さて次のお話ですが、
 ・・・・・・・・・・・・
 訳あって内緒です。
 書いちゃうと内容がもろにばれるというか、何というか・・・
 ああ、自分の文章力の無さを呪いたい!!
 ・・・・・・・・・・・・

 それでは、See You Agein?

2004/06/05


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