それは突然起こった。
逃げ惑う人々、燃え上がる火の粉。
災害の類いではない。人為的なものだった。
今の時代、人為的にこういうテロを起こす存在はただの一つしかない。
UM。
世界各地が動向を見守り、そして世界各地が最も恐れているものだった。
しかし、その場にUMの姿はなかった。
「また、妙な位置に現れよったのぅ・・・」
研究員の報告を聞きながら浦辺は呟いた。
大阪が襲撃(?)されてから15分が経っていた。
銃弾の着弾位置からUMの位置を割り出すのにたいして時間はかからなかった。
割り出したその位置は何もない場所だ。
何故何もないのか?
それは、そこが高度3000メートルの空だからだ。
「あの二人をここへ。」
手近に居た研究員を呼び止め、指示を出す。
まもなく、呼び出された二人がやって来た。
「UMですか?」
着いたすぐに浦辺に訪ねる。
「そうなんじゃが、ちょっとわけのわからん所におってのう。」
目の前にある巨大なモニターに生映像が映し出される。
空にポッカリと浮かぶUMの姿が悠然と映っていた。
「空・・・?」
シュッツはいつもと違う出現パターンを疑問に思っているようだった。
「でも、空ならナーエでどうにかできるだろ?」
フリューゲル。そう呼ばれる飛行システムがナーエには備え付けられていた。高度3000メートルくらいなら、完全に飛行範囲内だ。
「そうなんだけどね。」
言葉を濁す。
何か気掛かりでもあるのだろうか?
「わざわざ空から狙ってくるのに疑問感じてるんだろ、お前は。」
そういって、シュッツを小突く。心配しすぎだと言わんばかりだ。
「それもあるけど、何だか試されているような気がして・・・」
これだけは直感だった。
何に試されているのかは漠然としてはっきりしない。しかし、シュッツは確かに試されているような気配を感じ取っていた。
「お前の勘は当たるからな。気にしておいて損はないか。」
気にすると言っても、気にしにくいことではあるのだが。
「出方はどうであろうともUMには間違いないからのう。」
「今回も回収ですか?」
一応確認だけしておく。無論答えはわかっているつもりだ。
「そうなるな。」
当然の如く答える。
「すぐにブッ壊せたらいいんだけどな。」
頭をかきながら呟く。
しかし、アキラもUMのサンプルが必要なことはわかっていた。
「すぐに出動じゃな。」
『了解』
二人は声を合わせて返事をした。
シュッツには心に決めていたことがあった。
決して言葉には出さないし、行動にもうつそうとはしない。
時が来るまで・・・
そう思い続けて何年経ったのだろうか?
その時は間近に迫っているとシュッツの直感が告げていた。
(まさか、ね・・・)
そんな思いを噛み殺す。
今は、目の前にあることを終わらすことが優先。
そう、考え直した。
大阪上空3000メートル。
そこにUMは悠然と構えていた。
先程の大阪の狙撃からたいした動きもなく、ただそこに静止していた。
日本政府としては幸いとしか言いようがないだろう。一撃だけなら復興も比較的簡単に済む。ただでさえ、UMの標的になっているのだ。被害が少ないのにこしたことはない。
フェアは既に合体を終えていた。
狙撃をしてくるのなら接近戦には弱いだろうという考えのもとナーエで攻撃を仕掛けることにした。
「動かないんなら、こっちから行かないとな。」
アキラは身構える。
簡単にケリはつく。そう思っていた。
その考えが甘いことに気付くのにそう時間はかからなかった。
「
一撃必殺。
時間をかけずに決めようと思っていたのだろう。
しかし、その攻撃でUMが機能を停止させることはなかった。
「何?!」
一瞬、何が起こったのか、さっぱりわからなかった。
弾かれたのだ。
UMに触れることなく弾かれた。
「くそぉ!」
訳がわからず殴りにいくが、全ての攻撃は無駄だった。
やはり、弾かれる。
「どうなってんだよ?」
「シールドみたいなものが展開されてるみたいだけど・・・」
はっきりとはよくわからなかった。
「やれるだけやってやる!」
なりふり構わず技を出していく。しかし、その全ては弾かれていった。無論、ナーエ最大の攻撃力を誇る
「どうすりゃいいんだよ・・・」
すっかり、困り果てていた。
「一つだけ、試してないのがあるよ?」
シュッツが気付いた。
「あれは・・・」
アキラも何の事なのかよくわかっていた。
「大勢でこられたときの全方向型の技だぜ?」
この場面で使えそうには無いといいたいのだろうか?
「でも、使ってみないとわからないよ?」
アキラは頭をかく。
「わかった。やるよ。」
ナーエを少し後ろに下げる。
「
ナーエの全身から何本もの光の刃がほとばしる。
先程までと違って爆炎が巻き起こる。
「やったか?」
多少は効果が有る様ではあった。
「ダメだね。機能停止は確認できない。」
煙りが晴れ、再びUMが姿を現した時、その異変に気付いた。
「おい、シュッツ!見てみろ」
アキラが指したあたりに、確かに破損した痕がある。
「効いてる?」
「なら、何回でも撃ち続けてやる!」
光の刃が無数に飛び交う。
それでも決定打とはならない。少しずつ装甲を傷つけていくだけでたいしたダメージにはなっていなかった。
たいしたダメージになる頃には、フェアがエネルギー切れに陥ってしまう。
これでは埒があかない。
「・・・ちょっと待って。」
エネルギーが残りわずかになり、打つ手が無くなりつつあるが、シュッツが何かに気付く。
「何だよ?」
「もう一回だけ、撃ってみて。」
「次撃ったら飛ぶので精一杯になるんだぞ?」
(ゼーリエン シュス)の連発はフェアに大きな負担を掛けていた。
「その、次で弱点がわかるかもしれないんだ。」
「何?」
これを聞いて何もしないアキラではない。
「そういうなら、やってやろうじゃないか!」
最後の閃光がUMを貫く。
しかし、何度やっても結果は変わらずUMは怯む様子もない。
「わかった!」
それを見て、ようやく何かを掴んだようだ。
「アキラ、降下しよう!」
「へっ?」
突然の提案に戸惑う。
シュッツが何をやりたいのか、アキラには掴めなかった。
「地上から、フェルンで狙い撃つ。」
「それが弱点だっていうのか?」
アキラとすれば信じられない。フェルンで攻撃するのが弱点だとは思えなかった。
「正確には超遠距離攻撃が弱点。」
「なんでだ?」
「
つまり、シュッツが言いたいのはこういう事だ。
遠距離から攻撃すると、攻撃を弾いているバリアの展開が遅れる。
そこをつけば破壊することも可能である。
つまり、フェルンで地上から狙撃すれば破壊可能であると踏んだのだ。
「なるほどね。よし、やろう!
アインとツヴァイに分離する。
ただしすぐには合体できない。地上に近付いてからフェルンに合体する。
「
シュッツの声と共に合体シークエンスが開始される。
ナーエに合体する時に比べ、少しぎこちないのは仕方が無いことだろう。
絶対的な合体回数が違う。しかも、合体訓練を始めてまだ間もない。
それでも軽い戦闘なら実用レベルまで達していた。
「
掛け声と共にフェルンの両腕が巨大な銃心へと変化していく。
「
コクピットにスコープが現れる。
上空3000メートルに居座るUMに狙いを定める。
シュッツはこの一撃でUMを仕留めようとしていた。
充分に狙いを定め、引き金となるキーワードを発する。
「
声と同時に銃心から巨大なエネルギーの塊が発射される。
雲を突き破り、空を裂き、UMに迫り来る。
鈍い音と共にUMはなす術もなく胴体に風穴を開けていた。
全ての機能は停止し、地球の重力に引き付けられるように海へ落下していく。
何も無い空間がある。
そこに、玉座が現れる。
「彼等は合格だね。」
玉座に座っている男が呟いた。
「僕らが真に倒すべきは彼等だね。」
『はっ!』
左右に控えている二人が同時に答える。
「本格的に彼等の事を調べるよ。
ヴィッセン、今彼等についてわかっていることは?」
右に控えていた男が前に出る。
「あの機動兵器、フェアタイディゲンと呼ばれているようです。
先程の実験よりわかった事ですが、2形態に変形するようです。
パイロットについては今のところわかっておりません。」
化学者風の男が報告を終える。
「そう、以降はさらに詳しく調べようか。
マハト、次からはどうする?」
左に控えていた、武人風の男に玉座の男は尋ねる。
「人工知能はもはや限界。
「わかった。人選に関しては君に任せるよ。」
「お任せ下さい。」
恭しく頭を下げる。
「地球人類は愚かにも僕たちレフォルムに牙を剥いて来た。その行為に後悔するときは近い。
今後の君達の活躍に期待するよ。」
『はっ!』
「レフォルムに栄光を」
化学者風の男が消える。
「レフォルムに栄華を」
武人風の男も消えた。
残ったのは玉座とそれに座った男だけ。
「あちらには、僕に似た人がいるみたいだね。」
クックッと小さく笑った。
「さて、どうなるのか・・・楽しみだよ。」
言葉に余韻を残し、玉座も男も姿を消した。
次の話から本格的にレフォルムが攻めてきます。
今までが前哨戦だったわけです。
実は、今までUMは1体ずつしか出てきてなかったんですよね。
それが複数出てくるようになります。
戦いが激化していくんです。
ちなみに、この地点でアキラとシュッツが出会ってから半年くらいです。
時間経過を書いておかないと忘れそうだ。(汗)
さて次のお話ですが、
・・・・・・・・・・・・
訳あって内緒です。
書いちゃうと内容がもろにばれるというか、何というか・・・
ああ、自分の文章力の無さを呪いたい!!
・・・・・・・・・・・・
それでは、See You Agein?