映像が途切れながら流れている。
すべてフェアタイディゲンに関する映像だった。
それを1人の男がずっと眺めている。
男の名はツェアシュ・レリッシュ。
アキラ達が敵対しているUMを統べる総帥だ。
「マハト、
左隣から武人風の男が現れる。
マハト・クラフトが男の名前だった。
「申し開きはありません。」
マハトは畏まる。
「いつかは起こると想定していた事だからかまわないよ。
だけど、早めに決着を着けた方がよさそうだね。ヴィッセン、次の作戦は?」
右隣に化学者風の男が現れる。
名をヴィッセン・ケントンスといった。
「既に立てております。
次こそは忌まわしきフェアタイディゲン、撃墜できるかと。」
「そうか。楽しみにしているよ、2人とも。」
『はっ!』
その返事と共に2人の姿はかき消えた。
「フフフ・・・」
不敵な笑いをこぼす。
そして、再び映像に目を移した。
アキラが型の練習をするのはいつもの事だ。
こまめに訓練の時間を見つけて練習をしていた。
この日もその例に漏れず、少ない時間を利用して型の練習をしていた。
遠くから見ていると、まるでダンスのようにも見える。
アキラの型の練習は、研究所の所員にとっても名物になっていた。
実は女性職員にも男性職員にもアキラの人気は高い。
はっきりとモノを言うその性格と、生身で強いというこの格闘センスが人気の大きな理由だ。
「うしっ!今日はここまで。」
アキラ自身の休憩時間はこれで終わりだった。
足速に開発セクションに向かう。
今日は、ヤヨイに必ず来るようにと言われていた。
新しいシステムの実験をすると聞いている。
この実験にシュッツが向かない理由があった。
開発セクションの呼び出された部屋には陳妙な機械が置いてあった。
アキラは着いた途端に、その機械に取り付けられてしまう。
「・・・これでオレにどうしろって?」
「簡単に言うと、これ、操縦者の動きをダイレクトに伝えるためのシステムなんです。」
「へぇ。」
アキラが右腕を動かすと隣に置いてあるフェアのミニチュアの右腕が同じように動く。
「今回アキラさんにお願いしたいのはこれの動作確認なんです。」
「動いたらいいんだな。」
既に軽く動いていた。
しかし、ヤヨイが望むのはこんな軽い動きではないだろう。
「そうです。」
即座に型の動きを取り始める。
ミニチュアが寸分違わずアキラの動きをトレースしていく。
タイムラグもほとんどない。
「実験は終了です。」
10分も動いたところでようやく声がかかる。
「良いデータが取れました。協力ありがとうございます。」
「オレの動きとフェアの動きを連動させるのか?」
「DynamicMoveTraceSystemと言って、アキラさんの動きをフェアタイディゲンに完全にフィードバックさせるんです。」
「それは有り難いシステムだな。」
今の操作体系だとどうしても動きにラグが出てしまう。
アキラはそれを嫌っている。
しかし、操作体系そのものを変更しないかぎり、この欠点は克服できないと、浦辺からずいぶん前に言い渡されていた。
それがこのシステムにより克服される。
アキラにとってこれ以上有り難いことはなかった。
「今のフェアに付けるのか?」
「そんなに急かさないで下さい。まだテストの段階ですから、実際に取り付けるのはもう少し後です。」
「そりゃ、残念だ。」
できるだけ早く取り付けてほしい。
そんな感情が見え隠れしていた。
「また時々テストに付き合ってくださいね。」
「ああ。」
アキラにとってこういうテストは大歓迎だ。
これから先もうまく時間を空けて協力するつもりだった。
「じゃ、オレ行くからな。」
アキラは実験室をあとにした。
次に向かったのは浦辺の部屋である。
「アキラ君、実はな、柳沢君にある事を依頼されておるんじゃ。」
部屋に入ったすぐこれだった。
「はあ。」
重要な事だと聞かされていたのだが、この展開いまいちよく解らなかった。
「アキラ君、健康診断を受けに行きなさい。」
「健康診断ですか?」
アキラとしてはいたって健康のつもりだ。
だから、健康診断なんて頭になかった。
「柳沢君も念のためだと言っておったがな。」
「そうですか。じゃあ、近い内に病院に行きます。」
近い内とは言っても、いつ行けるのかまったく見当が付かなかった。
しかも、アキラの事だ。行かずに済ましてしまうかもしれない。
「今からでも良いんじゃよ。」
この後の予定は訓練だけだった。
もちろん出なくてはいけないが、浦辺の命令なら休んでもかまわないだろう。
「・・・そんなに検査に行かせたいんですか?」
病院が嫌いという訳ではない。
ただ、何となく面倒臭いだけだ。
「健康管理は大切じゃぞ、アキラ君。」
その通りである。
柳沢が通告してもアキラは一度も健康診断に行った事はなかった。
業を煮やした柳沢が浦辺を通じて最終通告を出して来たのだ。
「わかりました。明日行きます。」
アキラもこの執念には降参するしかない。
素直に従う事にした。
そんな矢先だった。
不意に警報が鳴り響く。
UMの出現を知らせる警報だった。
「行きます!」
浦辺は黙って頷き、アキラを見送る。
アキラは真っ直ぐに開発セクションの格納庫へ向かう。
場所は沖縄。
少し遠いが全力で飛ばせばどうということはない。
だが、シュッツはイヤな予感がしていた。
漠然とだが、何かが起こると、シュッツの中の何かは警告していた。
「アキラ?」
「何?」
「・・・なんでもない。」
伝えようかと思ったが、やめた。
たいした事ではない。
そう思いたかった。
しかし、その予感は沖縄に近付くにつれ強くなっていく。
確実に何かが起こる。
しかも、自分達にとって良くない事が。
それは、予知なのかも知れなかった。
沖縄近海にたどり着いた途端、UMの集団が待ち構えていた。
「
UM達の射程に入る前にナーエに合体する。
「気合入れていくぞ!」
始めから飛ばして行くようだ。
アキラには気になる事があった。
それは、沖縄に着くまでのシュッツの態度。
何かを隠している。
そんな雰囲気だった。
いつもの通りなら、シュッツ特有のあの予感だろう。
しかも相当悪い方向だと見当が付いてしまう。
だからこそ、早く決着を付けたかった。
シュッツの予感は良くも悪くも当たるからだ。
「
囲まれたところで確実に落としていく。
しかし、いつもと違って当たりが鈍い。
まるでこちらの攻撃が読まれているような、そんな感覚だった。
「シュッツ、機体の編成は?」
「いつもとあまり変わらないよ。
強いて言うなら遠距離攻撃タイプが多いかな。」
「そうか。」
当たりが悪いのも気になるが、無人機のはずのUMがこちらに寄ってこないのも気になる。
誘い出されているような、そんな感じがする。
気をつけるのに越した事はない。
アキラは改めて身構えた。
あるポイントにたどり着いた途端、一斉にUMが襲いかかって来た。
いつもとは比較にならない猛攻だ。
武装の使用なしの格闘戦だけでUMを叩き落としていく。
「アキラ!5時方向から砲撃!!」
瞬間避けられない事を悟る。
どう考えても体勢を立て直し回避するには時間が足りない。
「緊急回避するぞ、
合体を解除し分離するが逆に状況は悪くなる。
シュヴェスタには、UMを撃墜できるほどの火力も攻撃に耐えられるほどの装甲もなかった。
再度合体するしか選択肢はない。
しかし、飛行機能のないフェルンには合体できなかった。
「お前のカンは大当りだな。」
「・・・気付いてたの?」
「まあな。」
ずっと一緒に戦い続けていた。
そのせいなのか、シュッツの癖は大体わかっている。
「狙いは体勢の崩れを狙った一撃か。」
UMの攻撃をくぐり抜けながら、再度合体をする。
「イヤだね。ちゃんと弱点を突いてきてる。」
アキラの運動神経をもってしても回避できない一撃を狙ってきている。
アキラ達も気付いていたことだったが、実際にやられると腹立たしい。
「嵌められたかな?」
「間違いなくな。」
完全な罠だった。
フェルンには絶対防壁
これの使用を防ぐにはナーエと強制的に戦うしかない。
レフォルムはそれを実践して来たのだ。
海上という舞台を作り、フェルンに合体させないために誘い出す。
今まさに2人はその作戦にまんまと引っ掛かってしまった。
「状況は最悪か。」
アキラは眼前に広がるUMの群れを見据える。
無傷で切り抜けるのは不可能なのは数を見ればわかる。
しかし、直撃を受けなければ撃墜される事もない。
「遠距離タイプの挙動、割り出しておいてくれ。」
「わかった。けど、どうするの?」
アキラがやろうとしていた事はシュッツにはわからなかった。
「直撃を避けるだけだ。」
ここで墜ちる訳にはいかない。
その執念だけがアキラを突き動かした。
物凄く途中でスミマセン(パート2)。
完結は次回です。
自分で言うのも何なのですが、2回の続きモノが多いような気がする・・・
今回出てきたDMTSというのは、一言で言うと電童のコクピットです。
別の言い方をすると、Gガンダムのモビルトレースシステムとか、ダイモスのコクピットになるんでしょうか?
主人公が全員格闘家・・・。狙ってる訳じゃないですよ。
え〜と、どのような完結になるのかは次回のお楽しみという事にしてください。
これよりアキラ達は今までの中で一番危険な目に会います。
結構、意外なドンデン返しというか、何と言うか・・・
これは好みで分かれてしまいそう。
じゃあ、そんなの書くなよ。とか言われそうなんですが、半分の伏し目に重要な事の伏線張ってますので、勘弁してください。
と、いう訳なので次回はちょっと重要なイベントがあります。
それでは、See You Agein?